お悩み解決事例:加害者の保険会社から提示されていた約770万円の賠償金額が1519万円で和解できた
概要
概要 | 交通事故後、加害者の保険会社から提示されていた約770万円の賠償金額が、交通事故紛争処理センターの手続きをとることにより、最終的には1519万円で裁判外の和解ができたケース。 |
ご依頼者 | 静岡県西部地域にお住いの20代の男性 |
特徴 | 御依頼者が、交通事故により左手関節の神経症状(12級13号の局部に頑固な神経症状を残すもの)の後遺症を負ったケースになります。 |
解決までの流れ
1. 事案の概要
御依頼者は、交通事故により左手関節に神経症状の後遺症を負いました。その後遺症の等級は、前述した12級13号になります。ちなみに12級13号の局部に頑固な神経症状を残すものとは、その神経症状を裏付ける医証(例えば画像上の所見であったり、神経検査などのデータであったり)がある場合に認められる後遺症になります。従ってご本人が、むち打ちなどにより首や肩に強い痛みや痺れを訴えている場合であっても、これらを客観的に裏付ける画像所見などがない場合には、前記12級13号の後遺症が認められません。
御依頼者は、本件事故当時、学生で、就職先は特に決まっていませんでした。
加害者側の保険会社から提示された賠償金額は、後遺症の等級からすると、770万円という低額なものでした。その理由は、事故発生に関する御依頼者の過失(15パーセントの過失割合)と前記後遺症の喪失期間を39歳という限定した期間までしか認めないという点にありました。
2. ご依頼
御依頼者は、そもそも保険会社から提示された賠償額が適正な金額であるのか、自分には判断できないので、その点を弁護士に検討をしてもらいたい、また低額な提示であると判断した場合には、交渉などでできるだけ適正な金額で解決をして欲しいという御意向でした。しかし御依頼者からは、裁判での解決は望んでいないので、できるだけ交渉で解決をして欲しいというご要望でした。
相手方の保険会社と裁判前に交渉したのですが、やはり提示される金額が、1000万円程度まで増額されたとはいえ、依然として低額であると判断しました。御依頼者が裁判を希望されないこともあったので、交通事故紛争処理センターに手続きを申立て、解決を図ることを提案しました。御依頼者もこの紛争処理センターでの手続きに納得していただき、正式にその申立を行うことの依頼を受けました。
この交通事故紛争処理センターの手続きは、交通事故の紛争の早期解決を目的としているため、一般的に裁判などに比べると解決までに時間がかからないと言われています。また交通事故紛争処理センターでは、話し合いによる和解斡旋ができない場合は、審査と言って、裁定(結論)を出すこともあります。この裁定には、加害者側の保険会社は従う運用になっていますが、申立をする被害者の方は、この裁定に不満があれば、裁判をすることができることになっています。
3. 交通事故紛争処理センターの手続きについて
この手続きでは、紛争処理センターの担当弁護士が、被害者である申立人と相手方である加害者側の保険会社の主張を聞き、中立の立場で斡旋を行います。そして双方が、合意できるように手続きを進めるように努めてくれます。
この手続きの中で、御依頼者の代理人である私の方から、@本件事故の過失割合を被害者側に15パーセント認めることは妥当でないこと、A逸失利益の喪失期間を39歳までに限定するのは、相当でないことを資料等に基づき主張をしていきました。
最終的には、御依頼者側にも一部過失割合を認めましたが、概ねこちらの主張を認める内容で、紛争処理センターからは斡旋案を提示してもらいました。相手方の保険会社もこの斡旋案を受け入れ、冒頭で記載をした1519万円で和解が成立しました。
4. 担当弁護士からのコメント
過失割合については、本件事故の発生状況から一定割合を被害者である御依頼者にも認めざるを得ないとは考えていましたが、後遺症の逸失利益を39歳までに限定するという保険会社の主張には、やはり納得がいきませんでした。
後遺症の等級が比較的低い場合(1級から14級までの等級があり、1級が一番重い後遺症の等級になります)、後遺症により労働能力などに影響を受ける期間をできるだけ短い期間に限定しようと、加害者側の保険会社が主張することが良くあります。ある程度の期間が経過すれば、等級の低い後遺症では、そのような状態に慣れてきて、日常生活や仕事の上で大きな影響を及ぼすことがなくなるということが、その理由として言われることがあります。
そのため、後遺症の内容によっては、具体的に被害者が日常生活や仕事でどのような影響を受けているのか、その点を詳細に主張する必要があります。また後遺症に基づく症状は、短期間で慣れるようなものではなく、ある意味一生、その症状と付き合っていかざるを得ないことを医学的にもできるだけ主張していく必要があります。
本件でも、被害者の左手関節の神経症状について、担当している医師に、その内容を具体的に記載してもらい、「今後、疼痛、可動域制限の悪化が予想される。」という記載を診断書に書いてもらい、それを証拠として提出するなどの工夫をしました。
加害者の保険会社が提示する賠償額が適正なものであるのか、また適性な賠償額を請求するためには、具体的にどのような手続きがあり、それぞれどのような特徴(メリット、デメリットなど)があるのか、詳しくは当事務所弁護士にご相談下さい。