お悩み解決事例:甥から遺留分の請求されたが500万円以上を減額して示談が成立した

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概要

ご依頼者静岡県中部地域にお住いの60代の男性
担当家本誠 弁護士
特徴依頼者の甥から遺留分を主張されたケースであり、その請求金額を500万円以上を減額した上で示談が成立したケース。

解決までの流れ

1. 事案の概要

1-1 被相続人との関係

御依頼者には、弟さんがいましたが、この弟さんが亡くなり、その相続に関して、紛争が生じました。

弟さんは、若い時に結婚しましたが、直ぐに離婚をしました。子どもさん(この方が今回の依頼者の相手方であり、依頼者との関係では甥になります)は、母親が引き取り、離婚後は一切親子の交流がありませんでした。それから数十年の月日が経ちましたが、弟さんはその後結婚することもなく、独身で生涯を過ごされました。

弟さんは、仕事の面や生活の面で、色々と御依頼者である兄から援助を受けてきたこともあり、自分が亡くなった後、全ての財産を兄に相続させたいと考えました。そのため弟さんは生前に公正証書による遺言を作成し、全ての財産を兄に相続させるという内容の遺言を残されました。

1-2 相手方である甥が、相続が開始されたことを知った契機

弟さんは前記公正証書による遺言を作成するに際し、司法書士の先生に相談をされていたようで、司法書士の先生が遺言執行者として、遺言書で指定をされていました。遺言執行者とは、ごく簡単に言いますと、遺言書に記載された内容を実現する各種手続きを行う人です。遺言執行者に指定された司法書士の先生は、その義務として、弟さんが亡くなられた後、弟さんの相続財産の目録を作成して、相続人に交付する必要があります。つまり遺言執行者は、亡くなられた被相続人が、どのような相続財産を有しているのか、その財産目録(内訳書のようなもの)を作成して、これを相続人の方に通知とともに交付することになります。これによって相続人の方は、亡くなられた方がどのような遺産を有しているのか、その内容が把握できることになります。

本件においても、遺言執行者である司法書士の先生から、ご依頼者の相手方である甥の方が、前述した通知を受けたことにより、長年交流がなかった父親(御依頼者の弟)が亡くなり、どのような相続財産を有しているのかが分かることになります。

1-3 遺留分の行使

本件においては、前述した公正証書による遺言により、被相続人は子どもではなく、兄に全ての相続財産を相続させることが記載されていたため、子どもである甥としては、長年交流がなかったとしても、自分には相続分があるのではないかと疑問に思ったのかもしれません。そこで相手方である甥は、弁護士さんに相談に行かれ、全ての財産を相続した御依頼者に対して、遺留分の行使を行いました。遺留分とは、被相続人と一定の関係にある相続人のために(兄弟には遺留分はありません)、相続に際して、法律上取得することを保障されている相続財産の一定の割合のことを言います。この権利は、被相続人(亡くなった方)の生前の贈与又は遺贈によっても奪われることのないものです。相手方である甥は、被相続人の子どもですので、遺留分が保障されており、その割合は、法定相続分の2分の1になります。

本件においては、本来相続人は被相続人の子どもである相手方だけになりますので、その遺留分は、前述した割合である2分の1になります。従って被相続人の相続財産の2分の1については、甥としては最低限自分が法律上取得する権利を有していることを主張できることになります。

2. ご依頼

御依頼された方も、相手方である甥との交流は、全くありませんでした。そのため御依頼者と相手方である甥とで、直接話をして解決をすることが難しいと思われたようです。そこでこの件の依頼を私が受けることになりました。

御依頼者には、長年交流がなかったとしても、甥の方は、被相続人である弟さんの子どもである以上、遺留分は最低限、甥に渡す必要があることを説明しました。その点は御依頼者も良く理解をされていました。またご依頼者自身も長年交流がなかったとはいえ、相手方は自分にとっても血を分けた甥であり、また弟が離婚をした後、きっと寂しい思いをしたのではないかという気持ちから、できるだけ円満に解決をして欲しいという要望がありました。

弁護士としては時に徹底的に争うことも必要ですが、やはり親族間の問題においては、御依頼者の気持ちを尊重して手続を進めることが一番重要であると思います。私もこの点を念頭において、相手方の代理人である弁護士と交渉をしていきました。

3. 示談交渉について

3-1 相続財産について

事件を進めるに際して、相続財産の内容を調べていく中で、御依頼者を受取人とする生命保険が比較的相続財産の中で比重を占めることが分かりました。

大まかに相続財産の内訳を示しますと、(1)不動産が価値として900万円程度、(2)預貯金が2100万円程度、(3)生命保険が1400万円になります。これらの合計額は、約4400万円になります。

3-2 生命保険について

生命保険については、御依頼者を受取人としているため、本来であれば、この生命保険は相続財産から外されることになります。つまりこの生命保険は、相続財産ではなく、御依頼者自身の権利として受け取る財産ということになります。

3-3 特別受益の主張について

そのため相続財産は前述した不動産と預貯金の合計3000万円であり、相手方である甥が遺留分を行使したとしても、その2分の1の割合である1500万円を相手方に支払えば、それで足りると考えます。

しかし相手方の代理人からは、前記生命保険は、特別受益に該当するので、その額も相続財産に加算すべきであるという主張がなされました。相手方代理人のこのような主張は何を根拠にするのかというと、平成16年10月29日に出された最高裁の決定を理由としています。この最高裁の判断は、「相続人の一人が受け取った生命保険金は民法 903 条 1 項の特別受益にはあたらないが,保険金の額,この額の遺産の総額に対する比率,保険金受取人である相続人及び他の共同相続人と被相続人との関係,各相続人の生活実態等の諸般の事情を総合考慮して,保険金受取人である相続人とその他の共同相続人との間に生ずる不公平が民法903条の趣旨に照らし到底是認することができないほどに著しいものであると評価すべき特段の事情が存する場合には,同条の類推適用により,特別受益に準じて持戻しの対象となる」と指摘しています(判例タイムズNo1376 57ページ引用)。つまりごく簡単に前述した点を要約しますと、保険金の額だけで特別受益に該当するか否かを判断するわけではないとしても、支払われる保険金の額が、相続財産との比較で、非常に多い場合は、支払われた保険金の相当額を相続財産に加算して、相続分を計算することが妥当する場合がありますという意味です。もし本件において、生命保険が特別受益に準じて考えることが相当であると判断された場合には、相続財産は、4400万円相当であることになり、2分の1の遺留分を請求することができる甥は、2200万円を御依頼者に対して、請求することができます。

3-4 特別受益に対する対応

前述した最高裁は、明確に保険金額が遺産総額に対してどの程度の割合であれば、特別受益として、その保険金相当額を遺産総額に加算するか否か明言をしているわけではありません。しかし前記最高裁の「(支払われた生命保険金の額が)到底是認することができないほどに著しいものであると評価すべき特段の事情が存する場合には」と指摘する点から考えれば、やはり保険金額が、遺産総額の6割を超えるような場合には、特別受益に準じて扱われる可能性が高くなると思います。

しかし本件では、支払われた生命保険の額は、1400万円であり、それが遺産総額との比較で占める割合は、約46パーセント程度になりますので、私としては、前記生命保険は、特別受益に準じて考える必要はないと判断をしました。

しかし相手方の代理人からは、特別受益に準じて考えるべきであり、それを考慮しない場合には法的手続きも検討するという対応であったため、見込みを含めて依頼者と相談をしました。依頼者としては、前記2で記載したように円満に解決をして欲しいという強いご希望があったため、訴訟になれば、こちらに分があると考えていましたが、なるべくそのような手続きにならないように、相手方の代理人と交渉を続けていきました。

こちらとしては、何故被相続人が、兄である御依頼者に全ての相続財産を相続させるという公正証書による遺言を作成したのか、その経緯や理由をできるだけ詳しく御依頼者から聞き取り、その点を相手方代理人にも書面で伝えていきました。また御依頼者には、障がいを抱えている子どもさんもいることから、そのような事情も前述した遺言に至った理由に含まれていることも相手方に伝えていきました。

4. 結果

上述した公正証書遺言に至る経緯や理由、また御依頼者と被相続人である弟さんが、どのように今まで交流して、生活を送ってきたのか、また被相続人である弟さんが御依頼者からどれだけの援助(精神的なものを含めて)を受けて、生活を送ってきたのか、そのような心情的な面も含めて相手方の代理人には、事情を書面で伝えていきました。

相手方としてもこのような御依頼者の事情を理解をしてくれ、最終的には、御依頼者が相手方に対して、約1600万円程度の支払いをするという内容で示談を成立させることができました。相手方の請求は、約2200万円相当でしたので、最終的には500万円以上の減額に応じていただいたことになります。

5. 担当弁護士からのコメント

遺留分の行使に至るようなケースでは、遺言で相続に与ることができなかった相続人の不満は極めて強く、紛争が長期化することも珍しくありません。

しかし本件においては、御依頼者もそして相手方も、今までの経緯を双方が考慮して、落ち着いた対応をされたことが、むしろ早期の解決につながったと思います。

生命保険金が特別受益として考慮されるケースであるのか否か、非常に微妙なケースに遭遇することがあります。前述した最高裁の判断によっても、特別受益であることを否定できないようなケースも存在します。仮にそのようなケースであっても、何故被相続人が、そのような遺言を作成したのか、その経緯や理由を双方が理解をすることで、適切な解決に至る場合もあります。

受取人の記載のある生命保険は、原則としては、相続財産として遺産分割の対象にはなりませんが、一定の特別の事情がある場合には、相続財産にその金額を反映させる形で手続きを進めることも例外的にあることを理解していただければと思います。

また特別受益として、どのような場合に前記生命保険金が問題となるのか、そのポイントなどについて、詳しくは当事務所弁護士にご相談下さい。



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